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気になっていた「アート・オブ・スペンディングマネー」を図書館で借りることができ、先日読み終わりました。
自分にとって良かった点や覚えておきたい点を備忘録としてまとめます。
概要
原書は「The Art of Spending Money - Simple Choices for a Richer Life」で2025年10月発売、和訳版が同年11月に発売されています。
著者のモーガン・ハウセルは以前に読んだ「サイコロジー・オブ・マネー」の著者でもあり、続編のような位置づけです。
図書館にあったので予約していたのですが借りるまで6ヵ月半かかりました。
すぐに買って読みたい方は、よろしければ以下からどうぞ。
340ページ・21章構成で、「サイコロジー・オブ・マネー」と同様に1章あたりのページ数は少なめです。
印象に残った箇所
冒頭の説明によると「サイコロジー・オブ・マネー」はお金の増やし方、「アート・オブ・スペンディングマネー」はお金の使い方をテーマにしています。
読み進めると「サイコロジー・オブ・マネー」と被る内容も多く個人的には期待していた内容とは違いましたが、どちらもお金をテーマとしている以上結果として似た印象を受けたように思います。
今後も心に留めておきたい内容を抜粋しつつ、自分の考えも書いてみます。
3章「収入<期待=不幸」・6章「あなたを幸せにするもの」
3章と6章では関連するテーマを扱っていて、人間の欲望と幸福についての感じ方や考え方を説明しています。
随所で共通する考え方が出てきます。
(3章から抜粋)
何かを手に入れたとき、それが予想していたほどの喜びをもたらさないことがある。
...
何が足りないのかと問う時間を減らし、すでに手にしているものを楽しむ時間を増やす。
...
多くを期待しすぎないことで、心が豊かになる。
...
ストア派哲学に「富を必要としないことは、富そのものよりも価値がある」という格言がある。
...
ドーパミンの観点からは、重要なのは「持っていること」ではない。何でもいいから、とにかく新しい何かを「得ること」なのだ。
...
豊かさとは、「何を持っているか」ではない。本当に重要なのは、「持っているもの」と「欲しいもの」との差なのだ。
(6章から抜粋)
実際に私たちに幸せをもたらすのは、何かを新たに得ることではなく、新たに得たものと現実とのギャップにあるのだ。
...
「良い人生とは、必要なものすべてと、欲しいものの一部をもつこと」だ。
「サイコロジー・オブ・マネー」でも「足るを知る」という表現が出ていましたが、本書でも何度もできていて著者が特に主張したいことのように感じます。
サブセクションの「贅沢は「たまにする」くらいがちょうどいい」では、対比・緩急をつけることの重要性を書いています。
贅沢に慣れるとそれが基準になって喜びや満足感が得られにくくなるということですが、確かにその通りではないでしょうか。普段は質素・シンプルに過ごし、たまに贅沢をするといった生活のほうが満足感・幸福感を高められそうです。
私自身、お金(資産)はあればあるに越したことはないと思っていますし、FIRE生活に入ってからは資産を減らさないようにしたいと考えがちですが、ふと俯瞰で考えるとこれ以上増やす必要がないとも感じています。
資産運用に必要以上の時間をかけないように、たまに思い出したい内容です。
9章「リスクと後悔」
この章ではFIREのことが出てきて、長期投資で着実に資産を増やす人・考え方として描いています。
その対極に位置するのがYOLO(You Only Live Once/人生は一度きり)で、短期間で金持ちになろうとする人・考え方としています。
その上で以下の文が出てきます。
良いアドバイスとは、「今日を大切に生きよう」または「将来のために貯蓄しよう」といった単純なものではない。唯一の良いアドバイスは、「将来の後悔を最小化に抑えよう」である。
流れからは、「今日を大切に生きよう」はYOLO側、「将来のために貯蓄しよう」はFIRE側といえますが、一方に固執せず自分が過去を振り返った時に後悔を少なくするような決断をするべき、としています。
何か迷った時の判断基準として、この考え方を取り入れると良いように思います。
11章「自分で選べない人生は、一種の貧困である」
この章では経済的自立について扱っています。自立している・していないのどちらかではなく、著者の考える15段階のレベルを紹介しています。
レベル12の「投資収益によって、平均寿命以上に活きた場合でも、残りの人生の基本的な生活費を賄える」が一般的なFIの境界線の印象でした。FIREを考える上で自分の現在の立ち位置や目標を考える際の参考にできます。
他には「使っていないお金など存在しない」という表現が印象的で、銀行口座にあるお金(貯蓄)は使われていない資産とは考えず「自由・自立」のために使っているという考え方は面白いと感じました。
14章「アイデンティティ」
アイデンティティは日本語だと身元、独自性、同一性などに訳され、個人的には使いにくい単語です。Wikipediaでは「自己同一性」として説明があります。
自己同一性(じこどういつせい、アイデンティティ、英語: identity)とは、心理学(発達心理学)や社会学において、「自分は何者なのか」という概念をさす。
本書では以下のように説明しています。
お金を得ることがアイデンティティの一部になると、お金は手段ではなく、あなたを支配するものになってしまう。
...
倹約と貯蓄がアイデンティティの一部になりすぎて、それを変えられないのである。私はこれを「惰性的な倹約」と呼んでいる。それまでの人生で倹約の習慣が身につきすぎてしまったために、適切にお金を使う人生の段階に移行できない現象だ。
自分を紹介する時には肩書や職業で名乗ることが多くありますが、それに捉われないように注意すべき、という感じでしょうか。
このあたりはブランディングにも関係すると思いましたが、本書でもブランドについて触れていて「一貫性を示すことに価値がある」と書いています。
個人的には肩書やブランドに良い面もあると感じていますが、強調しすぎない程度に使うのがいいかなと思います。
15章「新しいお金の使い方を試す」
15章では気になったことは経験すること、それをお金にも当てはめることを薦めています。
自分が何を気に入るかは、試してみなければわからない。だから、できるだけ多くのものに手を出してみるべきだ。ただし、新しいことに次々と挑戦するためには、自分に合わないものはすぐに手放さなければならない。
これは、お金の使い方にも当てはまる。
私自身、見聞きするだけで終わらせず実際に試してみるべき、ということは重要と考えていて共感します。
一方、「自分に合わないものはすぐに手放す」という点はそうとも言えないと感じていて、これまでの経験上、最初は退屈に思えても後から面白くなったり興味を持ったこともあります。
バランスで考えると「惰性で続けていると感じたら手放す」のが妥当でしょうか。
18章「小さな支出との付き合い方」
日々の出費に対する考え方を両面で説明しています。
(小さな支出にこだわるメリット)
小さく、軽視してしまいやすい出費も、時間の経過とともに積み重なると、一番大きな利益を圧倒するほど大きな額になるのだ。
(小さな支出にこだわりすぎるデメリット)
小さな節約を積み重ねれば、それが大きな金額になることもある。だが同時に、それはもっと大きな問題から注意を逸らすことにもつながりかねない。
たしかに自分にとって身近なことほど理解しようと時間もかけますが、機会があまりない大きな出費ほど、自分にとっては未知であるために熟考せずに判断していることがあるかもしれません。
少なくともお金に関しては収入、支出を記録して可視化すれば気づけるので、小さな出費に対する時間のかけ方に注意すべきかなと思いました。
全体を通して
本書では、他人の目にどう映るかに執着することや注目・共感を集めるための行動について何度か触れていて注意を促しています。
「サイコロジー・オブ・マネー」でも言及されていましたが、お金の増やし方・使い方には誰にでも当てはまる公式はないので、「サイエンス」ではないとしています。前回は「サイコロジー」、今回は「アート」をタイトルに使っていますが、その使い分けや違いはよくわかりませんでした。
少なくとも、お金を使う価値があるものは人生経験の違いによって求めているものが異なるため、結局は自分にあうものは自分で探して決めるしかない、という結論に戻ります。
本書に具体的な内容を期待していると物足りなく感じるかもしれません。ただ、21章ありますので何かしらの気づきや役に立つ内容は含まれているはずです。
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