前から気になっていたマネー・ショートという映画を観ました。ブラッド・ピットが出演していて既に観た方も多いのではないでしょうか。
金融系を題材とした映画、くらいの感覚で事前情報なしであらすじもチェックせず見てみたら難解な仕組みや用語が多く、ちゃんと理解できないまま見終わってしまいました。
解説記事やブログを見てある程度わかってきましたが、原作があったのでこの機会に図書館で借りて読んでみました。
約450ページあり読み終わるまで数日かかりましたが、詳細で映画の各シーンを思い出せるような描写がありつつ、かなり理解が深まりました。
2005~2008年頃を中心としたいわゆるリーマン・ショックの話ですが、当時私は投資商品の資産割合が低く、かつ日本株がメインだったせいか、ニュースで騒がれているほどの影響はなく、少し他人事だった覚えがあり詳しく知らないままでした。
本を読むと、起こるべくして起こった経済危機であることや、その影響範囲がものすごかったことを知りました。
Wikipediaにも書いてありますが、日本ではリーマン・ショックという呼び方で定着している一方で、英語では"the financial crisis of 2007–2008"や"the global financial crisis"と呼称されています。
私自身リーマン・ショックという表現から、1つの大企業の倒産・破綻が中心だったというイメージをしていましたが、そんなレベルの話ではなく、誤解を招きやすいなと思いました。
ようやく当時のことが理解でき、映画はまた見直そうと思っているのですが、まだ見てない方は事前情報なしで映画を見ると消化不良になると思います。
ここでは作品の演出やストーリーの本質にはできるだけ触れず、背景情報や実際のタイムラインなど事前に知っておいた方が良い内容をまとめておきます。
映画と書籍について
原作の書籍「The Big Short: Inside the Doomsday Machine」(マイケル・ルイス 著)は2010年3月に出版され、日本語版「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」(東江一紀 翻訳)は2010年9月に出版されています。
2008年のリーマン・ショックを引き起こしたサブプライム住宅ローン問題を題材にしており、危機を予測した複数の人物を中心に彼らの行動や事象を描いたノンフィクションの作品です。謝辞にも登場人物のことが触れられていて、取材・インタビューに基づいて出来た作品であることがわかります。
映画化が2013年に決まり、アメリカで2015年12月、日本で2016年3月に公開されました。映画の原題は「The Big Short」で書籍の原作と同じですが、邦題は「マネー・ショート 華麗なる大逆転」です。
日本版は書籍と映画でタイトルが違い、書籍のタイトルのままで良かったのではと思いましたが、権利関係やマーケティングのためだったのでしょうか。
関連用語・組織
映画・書籍では、3組のヘッジファンドとドイツ銀行のトレーダーを中心にそれぞれのストーリーが描かれています。
アメリカで生活した経験があれば、さらに登場する組織の規模感や関係もある程度わかると思うのですが、その前提がないと理解が中途半端になると思います。
自分なりに整理してみましたが、知っておくと良かった背景情報を書いておきます。
金融商品
- MBS(住宅ローン担保証券):多数の住宅ローンを束ねて担保とし、そこから得られる利息や元本を投資家へ配当する証券
- CDO(債務担保証券):MBSなどの資産を細分化・再構成し、リスクとリターンの異なる複数の層に分けてパッケージ化した商品
- CDS(クレジット・デフォルト・スワップ):債券が債務不履行になった際の損害を補償する保険(対象の債券を持っていなくても購入できるため空売りとして利用可)
2000年代のアメリカの5大投資銀行
- ゴールドマン・サックス
- モルガン・スタンレー
- メリルリンチ
- リーマン・ブラザーズ
- ベアー・スターンズ
投資銀行は法人向けの金融・コンサルティング業務を提供する金融機関です。日本では証券会社が部門等で機能を持っている組織構造が主流のようです。これらの投資銀行が住宅ローンを証券化してMBSやCDOなどの金融商品を作っていました。
その他大手銀行
- JPモルガン・チェース
- バンク・オブ・アメリカ
- シティーグループ
- ウェルズ・ファーゴ
- ドイツ銀行
- HSBC(香港上海銀行)
- UBS(スイス)
前述の投資銀行の他に、大手銀行も個人や企業に対する預金・貸出業務に加えて、安全とされる金融商品の販売・購入・運用をしていました。
アメリカの三大格付機関
- ムーディーズ
- S&P
- フィッチ
国や企業が発行する債券の信頼性や、利息が約束通りに支払われる確実性をランク付けする民間企業です。債券毎にトリプルA(AaaまたはAAA)やBなどの格付けの情報がありますが、あの判断、算定をしている企業ですね。
保険会社
- AIG
AIGの子会社AIGファイナンシャルプロダクツが、保険商品の1つとしてMBSやCDOのCDSを販売していました。
タイムライン
映画・書籍に関連する事象の一部を時系列にしました(横幅の関係で見づらいですが...)。
2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが倒産していますが、同日メリルリンチはバンク・オブ・アメリカにより吸収合併、その半年前にベアー・スターンズはJPモルガン・チェースによって買収されています。ですので当時の5大投資銀行のうち3行が経営破綻に陥っています。
そして2008年9月18日にはAIGに対してアメリカ政府による救済がありました。
(という影響範囲の広さを私は当時全然知りませんでした)
映画・書籍では2005年時点で危険な兆候に気づいた人がいたこと、それから2006年6月にアメリカ住宅価格の下落がはじまってもしばらくは市場への影響があらわれず、2007年にも様々な動きがあったことが描かれています。
おわりに
実際にこのレベルの暴落が起きた場合にどう行動するのが望ましいか考えたのですが、個人レベルだとどうしようもないなと思いました(身も蓋もないですが...)。
FIRE関連本でも対策として書かれていた覚えがありますが、暴落時に投資資産の取り崩しをしなくてもすむように、いわゆる防衛資金で生活をして回復を待つが最善の対応でしょうか。
今は日本でも投資が浸透して多くの人が資産形成していますが、備えの1つとして過去に実際に起きていたこの金融危機を学んでおくのも良いと思います。
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